社会科研究
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開かれた価値観形成をめざす歴史教育の論理と方法 : 価値的知識の成長を図る四象限モデルの検討を通して
溝口 和宏
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2012 年 77 巻 p. 1-12

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抄録
本研究は,歴史教育における開かれた価値観形成の論理と方法を明らかにすることを目的とする。近年,民主主義社会に生きる市民育成を図る多様な歴史教育論が提起されてきているものの,それらは,価値と意思決定の関係,個人の価値観形成と歴史教育との関係を十分に明らかにするものとなっていない。その点で,本研究は以下の三つの意義をもつ。第一は,意思決定における価値的知識の形成という視点を導入することで,個人内の価値形成と法制度に組み込まれる歴史的社会的な価値形成とを俯瞰的に対照させる,歴史教育の内容編成原理を明らかにした点に,第二は,歴史的に作られた社会を編成する多様な原理を相対化させ,原理間の関係を捉え直すことのできる内容編成モデルを提示した点に,第三は,アメリカの人種問題を事例に,モデルを具体化する教授書の構成案を示すとともに,教材化の視点や単元を構成する原理を示した点にある。
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© 2012 全国社会科教育学会
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