2017 年 86 巻 p. 25-36
本研究は,知識や技能は個人の内面を超えて形成されるという立場をとる。個人の内面を超えて知識や技能を捉えていくことができれば,他者や学習資源などの外部に目を向けていくことが可能となる。 そうすることで,市民社会への参加の程度を把握していく学習評価を開発することを目的とする。
目的を達成するために,本研究では以下のことについて論じている。第1に,市民社会への参加としての学習評価の原理を明らかにすることである。正統的周辺参加に依拠すると学習は共同体への参加となる。さらに,参加は市民社会において意味や価値を有するように設計する必要がある。
第2は,特定の小学校社会科学習において,ある1人の学習者が形成した知識や思考に関するナラティヴを取り上げ,市民社会への参加の程度を把握していくことである。そのことで,学習者が市民へと変容していることを明らかとしている。
第3は,市民社会への参加に注目した学習評価の原理を明らかにすることである。その原理とは,教師以外の第三者による評価である。そのことで,市民社会において意味や価値を有する社会科学習としていくのである。
第4は, 市民社会への参加に注目した学習評価の意義について確認することである。すなわち, 教師以外の第三者評価を取り入れることで,市民として変容する契機として学習評価を位置づけたことである。
以上のことにより,市民社会への参加の程度を把握する社会科学習評価の意義とその実際を示すことができた。