抄録
本研究は,小学校外国語活動の教室構造のどのような心理的側面が,小学6年生の中学校での英語学習に対する自己効力に関連するのかを調査検討した。自己効力とは,ある行動や課題に対する自分の遂行可能性についての判断である。これを,中学校での英語学習を自分はがんばれるだろうという見通しを測る鍵概念と考えた。また,この自己効力と,ある行動がどんな結果を生み出すかという結果期待が相まって人の行動に強い影響を及ぼすことから,結果期待との関連も検討した。これらに影響する外国語活動に見られる心理的側面を,授業の熟達志向的な構造を捉えるTARGET構造から見た。調査には小学6年生630名が参加した。分析の結果,児童は教室環境を「活動価値」「学びへの自己関与」「承認」「協同作業」の4つの側面と認知していた。そのうち,自己効力に最も関連するのは,「学びへの自己関与」の側面であった。児童がこれから先の英語学習をがんばれるという思いは,外国語活動の中で自分が能動的に学習に関わっていると認知することと関連することが明らかとなった。また,自己効力と結果期待の両方が高い児童は,教室環境のどの側面も高く認知し,逆にどちらも低い児童はどの側面も低く認知していた。さらに,結果期待は十数回の授業経験を経て上昇した。最後に,以上の結果について,教室環境認知と自己効力信念との関係という観点から議論された。