2017 年 14 巻 01 号 p. 195-209
日本の小学校外国語活動では「コミュニケーション能力の素地を養う」ことが大きな目標として掲げられている。しかし,4 技能の視点から『小学校学習指導要領』を見てみると,「聞くこと」「話すこと」は積極的に導入しているが,「読むこと」「書くこと」に関しては消極的な姿勢を見せているのが現状である。果たして,「読むこと」「書くこと」は小学校の段階では必要ないのであろうか。その問題を解決すべく,授業の基盤となっている「教科書」を見ていくことにした。本稿では,日本・韓国・中国の小学校英語教育で最も使用されている「教科書」を1 種類ずつ選び,4 技能の視点から詳細な分析を試みた。その結果,韓国・中国の教科書では学年が高くなるほど教科書における「読むこと」「書くこと」の割合が増えていることが明らかとなった。一方,日本の教科書は僅かな増加のみであった。このことは,さらに児童の発達面からの研究,そして日本の英語教育体制の現状を含め,今後小学校の英語教育の発展を考えていく上で検討していくべき重要な点であると考える。