2015 年 15 巻 01 号 p. 155-166
現行の学習指導要領は,小学校,中学校,高等学校を通して,児童・生徒の「コミュニケーション能力」の育成を目ざしている。つまり,今後,益々英語による発信能力の育成が求められるわけであるが,そのためにはその発信手段となる英語の音声指導について,より一層充実させる必要がある。 一般に,教室における音声指導は,単語を構成する個々の音である音素 (phoneme) と発話レベルにおけるイントネーション,ストレス,テンポ,リズムなどの音声的な多様性を表す超分節音韻 (suprasegmental phonology) の指導に分けられる。本稿では,両者の視点から入門期における音声を軸 とした英語指導について概観し,実際の指導に活用していただくための手がかりを提供したい。 外国語学習の入門期では,音声を中心とする指導が望ましいことは確かであり,本稿では,この考えに基づき,1)外国語学習における「音韻認識」の重要性,2)中学校入学前にしておきたい音声を基軸とした英語指導として,音素認識を促す活動の具体例,および英語のリズム,イントネーションなどの音声的特徴に慣れ親しませるための活動の具体例の提示,3)中学校入門期における語彙指導として,新出語を活用したフォニックス指導による音素やその組み合わせの使われ方を帰納的に習得していく手法とその実践結果について述べる。