小学校英語教育学会誌
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研究論文
小学 6 年生の言語性短期記憶における音韻認識と音声産出の特徴
佐久間 康之高木 修一
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2019 年 19 巻 01 号 p. 146-

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抄録

本研究は,言語性短期記憶の観点から日本人小学生の音韻認識と音声産出の特徴を検証した。言語 性短期記憶は語彙習得に関わっているとされ,非単語反復課題を用いた実証が行われてきた (e.g., Gathercole, Willis, Emslie, & Baddeley, 1992; Sakuma, 2017, 2018; 高木・佐久間, 2017; 湯澤・湯澤・関口・李, 2012)。これらの先行研究では,音節数および子音連結が多い非単語ほど認知的な負荷が大きく, 処理が困難であることが示されてきた。しかし,これまでの研究においては音韻認識と音声産出が一 括りに扱われており,それぞれのメカニズムは個別に検証されてこなかった。そこで本研究では,公 立小学校で2年間英語を学習した日本人小学6年生 107 名と 91 名を協力者として,非単語反復課題に取り組ませ,それぞれから音韻認識と音声産出のデータを収集した。非単語の音節数および子音連結 が音韻認識と音声産出に与える影聾を検証するため,一般化線形混合モデルによる分析を行った。そ の結果,非単語の音節数の増加は音韻認識と音声産出の両方を阻害した一方で,非単語に含まれる子 音連結数の増加は音声産出のみを阻害し,音韻認識には影聾しなかった。このことから,日本人児童 にとって音節数の多い単語の学習は音韻認識の段階で困難であるのに対し,子音連結の多い単語の学 習は音韻認識の段階ではなく,音声産出の段階で困難が生じる可能性が示唆された。

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© 2019 小学校英語教育学会(JES)
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