小学校英語教育学会誌
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Print ISSN : 1348-9275
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研究論文
小学 5, 6 年生の文法知識
文法性判断課題,メタ言語知識課題の結果から
内野 駿介
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2019 年 19 巻 01 号 p. 162-

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抄録

第二言語習得研究において文法知識は暗示的知識と明示的知識の総体であると捉えられる。これまでの中学校以降の英語教育では明示的知識の獲得とその自動化が目指されてきたが,小学校段階では定型表現依存型の暗示的文法知識の獲得を目指すべきである (板垣, 2017)。しかしながら日本人小学生の文法知識を対象にした実証研究はこれまでにほとんど行われておらず,少ない先行研究の中にも明示的知識,暗示的知識の別を明らかにしたものはない。そこで本研究では公立小学校 6 校の小学 5, 6 年生 446 名を対象とし,時間制限付文法性判断課題 (TGJT) とメタ言語知識課題 (MKT) を用いて児童の暗示的知識,明示的知識を測定することを試みた。分析の結果,TGJT の全体正答率は 48.1%でチャンスレートを下回った。この値は先行研究の結果と比べて低く,先行研究で用いられた文法性判断課題においては児童が明示的知識,暗示的知識の両方を活用して回答していた可能性が示唆された。 また MKT の全体正答率は 47.5%であり,暗示的指導が中心の小学校英語教育であっても児童は明示的知識を獲得することが可能であることが示唆された。また各課題の正答率には言語項目によってばらつきがあり,児童が知識を獲得しやすい言語項目とそうでない項目があることが明らかになったほか,各課題の正答率は 5 年生よりも 6 年生のほうが有意に高く,小学校英語教育を通した明示的,暗示的知識の学習可能性が裏付けられた。これらの結果に基づき,小学校段階での文法指導のあり方について示唆を行った。

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© 2019 小学校英語教育学会(JES)
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