小学校英語教育学会誌
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研究論文
音聾音声学に基づく "Left" と "Right" の分析
児童の混乱要因
岡本 真砂夫
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キーワード: 発音, 母音
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2019 年 19 巻 01 号 p. 86-

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抄録

"Left" "Right" は,日本語で「レフト」「ライト」としても定着しており,児童に馴染みが深い。JTE(日本人英語教師)の "Left" "Right" を聞き分けられるようになった小学校 6 年生児童に,ALT(外国語指導助手)の音声で命令文 "turn left" "turn right" を用いたゲームに取り組ませたところ,弁別できず混乱した児童が多くいた。英語母語話者の声になった途端区別ができなくなるのはなぜか,原因 を分析することにした。6 年生で行った授業の様子を,3 台のビデオカメラと 6 台の小型ボイスレコーダーで観察した。 "Left" "Right" の音の特徴を分析するため,日本語母語話者 1 名と英語母語話者(アメリカ出身)3 名,並びにデジタル教材 (Hi, friends! We can!)から,単語 "Left" "Right" 並びに命令文 "Turn left" "Turn right" を録音した。音声分析ソフトウェアPraat を用いて分析した結果, "Left" "Right" は,母音[E]と[a ]におけるフォルマントの,最も周波数が低いスペクトル包絡の山である F1, 2 番目に周波数が低いスペクトル包絡の山である F2 の数値・変遷が似ていることが確認された。また,onset である[l] [r]がどちらも流音であり, 3 番目に周波数が低いフォルマントのスペクトル包絡の山である F3 に違いが確認された。これらが児童の混乱の原因だと考えられる。 "Turn left" "Turn right" に関しては,Prosogram を活用し,ピッチ変化を比較した。英語母語話者はピッチ変化が少なかったが,デジタル教材の音声には大きなピッチ変化がつけられていた。また,[E]と[a ]の F1, F2 の差が大きかった。 "Left"と "Right" は二者択一で用いられるので聞き分けが重要である。日本語母語話者には F3 の発音が難しいため, "Left" "Right" を取り入れた授業を英語母語話者であるALT と行う意義は大きいといえる。

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© 2019 小学校英語教育学会(JES)
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