2020 年 20 巻 01 号 p. 226-241
学習指導要領の改訂によって,小学校外国語科では英語の「読むこと」が新たに導入された。学習者が読むことを学ぶためには,読み物教材 (readers) の使用が効果的な方法の1 つとされる。小学校での読むことの導入やその中学校への接続を踏まえれば,小学生から中学生程度までの年少英語学習者を対象とした読み物教材の需要はこれから高まることが予想される。本研究は,そのような年少英語学習者向けの教材の選定や開発について示唆を得ることを目的として,これらの教材に含まれるテキストの言語的特徴を多面的に評価し,その特徴と教材の難易度の関わりを明らかにすることを試みた。年少者向けに作成された難易度の異なる英語読み物教材63 冊を対象に,英文解析プログラムによってテキストの特徴を単語,文,文章の観点から分析・評価を行った。その結果,教材に含まれる語彙の獲得年齢,文の統語的類似性,語彙的な多様性,動詞の意味の重複が難易度によって大きく異なっており,これらの特徴に基づけば高い精度で年少者向けの読み物教材の難易度を推定できることが示された。これらの結果に基づき,年少英語学習者向けの読み物教材を理論的・客観的に開発,評価,選定するための示唆を与えた。