2020 年 20 巻 01 号 p. 272-287
令和2 年度(2020 年度)より小学校5,6 年生の外国語教科化に伴って英語の読み書きが正式に導入される。そうしたなか,英語の音と文字の習得をより効果的に支援する指導が模索されている。本研究は,ともに小学校5,6 年生に在籍する新潟県南魚沼市の児童を指導群,新潟市の公立小学校児童を対照群とし,約半年間のジョリーフォニックス(多感覚シンセティック・フォニックス,以下JP)指導の有無が,児童の日本語および英語における音韻認識・操作効率に与える影響について,被験者間・被験者内分析を通して検証した。結果として,指導群の児童は,JP プログラムで英語の音素と文字の対応について明示的な指導を受けることにより,対照群の児童と比べ英語の音韻認識および操作の能力が有意に向上したとともに,日本語における音韻操作効率にも肯定的な影響を与えたことが示唆された。このことは,JP プログラムにより,日本語と英語の音韻認識・操作効率が互いに関連し合い,かつ影響を及ぼし合う関係が構築された可能性を示している。また,日本語と英語のテスト間での相関関係を分析した結果,日本語テストではみられなかった困難さが英語テストにおいて示された可能性が示唆された。そうした結果をもとに,日本語と英語の読み書きの習得に対する困難さの発現状況や,その背景にあると思われる要因について考察する。