2020 年 20 巻 01 号 p. 288-303
本研究は,小学校教員の研修に役立つ示唆を得るために,文部科学省(2017)が小学校教員研修のために制作した『小学校外国語活動・外国語研修ガイドブック』(以下,ガイドブックと呼ぶ)に記載されているSmall Talk を,教師の発話がどのように工夫されているかの点から分析した。分析の観点として,英語で英語を教える指針である MERRIER Approach を用いた。MERRIER Approach とは,Model/Mime, Example, Redundancy, Repetition, Interaction, Expansion, Reward という7 つの方略を用いて,第二言語習得を促進するとされているインプットやインタラクション,フィードバックの機会を学習者に提供することを主張している。5 年生の9 Units の Small Talk(全184 分析単位)を分析した結果,MERRIER Approach の7 つの指針が活用された教師の発話は119 分析単位であった。これらの SmallTalk には,学習者に質問を投げかけるという Interaction の指針が最も多く含まれていた。このことは,ガイドブックに記載されている Small Talk が,話すこと[やり取り]に関する言語活動であることを示すものである。また,Interaction に関する質問の種類に関して,質問者が答えを知らない質問をするというReferential Question が多く見られ,Small Talk は真正性のある言語活動として機能していることが分かった。これらの結果に基づき,教師が教室で発話する時に注意すること,また教員がどのように Small Talk を研修していくかについての示唆を示した。