2021 年 21 巻 01 号 p. 111-126
2020 年度より新設された外国語科では,外国語(英語)に繰り返し触れることによって語順の規則性に気付かせて内在化させたり,伝えたいことを表現するために必要な語と語の組み合わせに意識を向けさせたりすることが求められている(文部科学省, 2018)。学習者の気付きや規則の内在化を促す言語活動の設計には,学習者の実態把握が必須であるが,小学生が持つ文の構造に関する知識を調査した実証研究は極めて少なく,その測定法も確立されてはいない。本研究では,小学生に内在する英語の文に関する知識を測定する方法として,模倣発話タスク (Elicited Imitation Task) とその評価方法を提案し,小学5 年生67 名を対象に,模倣発話の採点に必要なスコア基準の妥当性の検証と,模倣発話における「語」「句・連語」「文」の質的分析を通して発達過程の観察を行った。その結果,スコア基準に従って算出した各児童の模倣発話スコアは,言語知識の外的基準としての受容語彙サイズとは高い相関があったことから,その妥当性は実証できたといえる。また,文の知識の獲得には至っていない児童も繰り返し触れたことのある表現は定型として「文」が再生できること,「語」は名詞が大半を占めるのに対し,「句・連語」には動詞句・副詞句・名詞句の他,音韻語と呼ばれる連語など多様な構造が含まれていることが明らかになった。これは,名詞は単体でも記憶されやすいが,動詞は連語で記憶されることを意味している。教育的示唆として,動詞は活用頻度の高い目的語や副詞などとの組み合わせで聞かせたり使ったりすることによって知識として定着することが期待できる。