2021 年 21 巻 01 号 p. 159-174
これからの小学校英語教育を考える際に,日本人は海外の先進的とされる実践例に目を向けがちであり,日本の過去から学ぼうという態度を欠いているのが大きな問題点である。CLIL(内容言語統合型学習)についても例外ではない。明治時代にはすでに小学校英語教育が行われており,CLIL の研究をする際にも海外ばかりではなく,日本の過去にもあった良き手本にも目を向ける必要があると考える。本研究は,明治時代および昭和初期の時代の小学校用国定英語教科書の分析を通して,「内容」「言語」の2つの軸から,どのような他教科の内容が取り入れられ,どのような言語の習得が目指されていたのかを考察する。分析対象となる教科書は,文部省著The Mombusho English Readers for ElementarySchools『小学校用文部省英語読本』全3巻(明治41~43 年)とThe New Mombusho English Readers forElementary Schools『小学校用文部省新英語読本』全2巻(昭和14~16 年)である。研究の結果,これらの教科書には,他教科内容を学びながら言語の習得も同時に目指すCLIL的な要素が多く見られた。また,イラストを多用し,オーセンティックな場面で英語を学べるよう工夫されていることが明らかになった。