2021 年 21 巻 01 号 p. 4-19
本実践は,公立小学校における外国とのビデオ通話を活用した取り組みが,どのように参加児童のスピーキング力とコミュニケーションをしようとする意思に影響を与えたかを考察するものである。2018 年告示の小学校学習指導要領外国語の話すこと(やり取り)では,実際のコミュニケーションにおいて主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養うことを目標としている。そこで,本実践では,参加した公立小学校の6 年生2 クラス34 名のスピーキング力とコミュニケーションを図ろうとする態度を検証し,ビデオ通話を活用した国際交流の授業実践の効果を明らかにする。実施期間は2020 年の3 学期にあたる,1 月から2 月までの約2 ヶ月間である。スピーキングテストの結果,指導の前後の平均点の差は有意であり,質問作成能力が向上することがわかった。さらに,様々な疑問詞の使用も増え,相手の応答内容を理解した上で追加質問するなど,関連性がある質問をする傾向が観察された。聞くこと話すことへの興味や意欲といった授業への好意度についての質問紙の結果,事前と事後において有意差が見られ,繰り返し英語でやり取りすることで,興味や関心を高めることが明らかになった。一方で,発話の抵抗感についてはあまり変化がなく,最初から話すことに対する抵抗感が低いことがわかった。計量テキスト分析の結果,相手とのコミュニケーションについて気づきや発見をしていることがわかった。特に,下位群は,英語で相手と活動することの楽しさに気づいたことが明らかとなり,熟達度に関わらず全員で取り組める実践方法になる可能性が示唆された。