2021 年 21 巻 01 号 p. 54-69
2020 年度より外国語が5・6年生において教科となり,7社から検定教科書が出版され自治体ごとに採択された教科書を使用した授業が開始されている。しかし,指導される語彙はどの教科書を使用するかにより異なる可能性があることも事実である。そこで本研究は,平成29 年告示の学習指導要領下で使用される教科書の語彙データからコーパスを作成し,教科としての英語授業において児童が共通して理解できるように指導するべき受容語彙のリストを作成することを目的とする。その開発過程とコーパスおよびリストに含まれる語彙の分析から,検定教科書の異なり語数,総語数がLet’s Try!とWe Can!と比較して大きく増加していること,各社教科書の異なり語数は,新学習指導要領に示されている600 語から700 語を大きく超えていること,そして,教科書間において異なり語数,総語数ともに違いがあることが明らかになった。そのため,小学校の英語の授業において,語彙項目ごとにその重要度を判断し,軽重をつけた語彙指導の必要性が示唆された。最後に,開発したリストの教科書の英文に占めるカバー率から,リストの上位1,000 語を小学生が共通して学習するべき受容語彙,その中の上位600 語を確実な定着を求める語として設定した。このように,指導するべき語彙をデータによって客観的に示すことは,小学校の英語の授業における効率的な語彙指導およびスムーズな小・中連携のための基礎資料となることが期待される。