2022 年 22 巻 01 号 p. 118-133
本研究の目的は,公立小学校の 5・6 年生の学年末に,同じスピーキングタスクを横断的に実施し, パフォーマンスを学年間比較することにより,外国語科で学習した語彙・表現・文構造など言語に関 する知識や技能の保持の実態を確認することである。国際交流をしている台湾の小学校から来た転校 生と英語で話す(やり取りする)というバーチャル体験ができるプログラムを作成し,5 年生の各単 元のパフォーマンステストの評価対象の疑問文を中心とした産出を促すタスクを実施した。2 名の指 導者が,計 141 名の発話について,タスク達成度と文構造・語彙・情報数に基づいた 6 段階の判定基 準による項目別ルーブリック評価を行った。その結果,10 項目のうち 3 項目で 6 年生よりも 5 年生の 方が有意に評定値が高く,7 項目は学年間で差がなかった。この理由の1つとして,各単元のパフォ ーマンス評価が,5 年生は [やり取り] 主体であったのに対し,6 年生は [発表] 主体であったことが 考えられる。多くの小学生にとって,各単元で使うことができた表現であっても,実際のコミュニケ ーションの場面において即興で疑問詞を使い分けて主語と動詞を組み合わせて疑問文を産出すること は難しい。外国語学習を通して得られた知識や技能を保持することは容易ではないことを踏まえ,パ フォーマンス評価では「知識・技能」の評価対象とする文の種類や語彙・表現・文構造などのバラン スに配慮し,形成的な学びの中にもスパイラルな学びが経験できる授業設計をする必要がある。