2022 年 22 巻 01 号 p. 86-101
本稿では,授業者の指導歴や言語教師としての指導観が,外国語の授業にどのような影響を及ぼすかについて明らかにするために,同一町内に存する小学校 2 校の外国語の授業を対象とし,Frölich,Spada and Allen (1985) で開発された授業分析手法である Communicative Orientation of LanguageTeaching. Observation Scheme (COLT) を用いてコミュニケーション志向の観点から授業の特徴を比較した。またその結果を授業者にフィードバックとして提示し,授業者を対象とした半構造化面接を行い,グランデッドセオリーアプローチにより質的な分析を行った。結果は 2 校の授業は同一の学習指導案で行われているが,COLT による授業分析により,授業形態・授業内容・話題制御・学習者の英語使用技能などすべてのカテゴリーにおいて特徴が異なることが示された。また指導経験・言語教師としての指導観が異なることも示された。したがって,授業者の経験や言語教師としての指導観が外国語授業に影響を及ぼすことが示唆された。