林業経済研究
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戦後林政の限界と新たな森林政策への視点(現代林政の課題と方向を考える-基本法林政30年を振り返りつつ,1995年春季大会論文)
柿沢 宏昭
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1995 年 1995 巻 127 号 p. 13-22

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抄録

社会・経済における森林の位置付けが大きく変化し,生物多様性の維持など生態系保全への要請が高まる中で,林政は大きな転換を迫られている。これまでの林政は極めて単純化して森林を認識した上で,生産力向上を目的として構成されてきた。このため林政の基礎となる森林資源などのデータ収集や森林管理技術・技術者の養成が軽視され,林政を支える基盤が弱体化・空洞化してきている。また,森林を構成する林木以外の構成要素や森林の多面的な機能,さらには土地利用管理といった分野が林政の対象となることはほとんどなかった。このため無秩序な土地利用が進んで資源を劣化させるとともに,生産・生活に様々な影響を与えている。これからの森林政策を構想する場合は,流域を一体とした土地利用管理のなかに森林を位置づけつつ,複雑な生態系として森林を認識してこれを総合的に管理する枠組みが必要とされている。また,森林も社会も極めて多様であるので,地域をベースとして広範な市民の参加によって政策が形成されるべきである。

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© 1995 林業経済学会
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