林業経済研究
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三椏・楮の生産・流通構造の変化(自由論題論文,1994年秋季大会)
恩田 英子
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1995 年 1995 巻 127 号 p. 191-196

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抄録

明治維新以降,急激な貨幣経済の進行の中で,高知県山村においてこの転換を支えたものの1つが三椏・楮であった。また和紙市場も拡大し,製紙原料である三椏・楮の需要も急速に高まっていった。本論文では資本主義の展開との関連において三椏・楮の生産・流通構造の歴史的変化を明らかにし,現代の「自由化」時代の市場構造を分析することを目的とする。高度成長期以前,三椏・楮は山村経済を支えていた重要な換金作物であった。そのため,高知県中央山間部では広範に栽培されていた。ところが高度成長期以降の産業構造の激変期において和紙産業の衰退,代替財の増加,労働力不足等により,三椏・楮の需要は激減し,生産構造も弱体化していった。そのため山村解体と共に三椏・楮生産は衰退過程をたどることとなった。その後の「低成長」及び「構造調整」下においては,新たな展開として,少数の商人資本である原料問屋と商社により開発輸入が行われ,今日では輸人材が主流を占めるようになり,「寡占的」流通構造を呈するようになった。その結果,生産構造が弱体化している国内生産農家は国際化の波までも受け,その生産構造は壊滅的な時期を迎えている。

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© 1995 林業経済学会
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