林業経済研究
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山村における農林地の存在形態とリゾート開発の問題 : 新潟県安塚町須川地区(自由論題論文,1994年秋季大会)
篠田 朗夫
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1995 年 1995 巻 127 号 p. 221-226

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抄録

近年,多くの山村地域では農林業の衰退とともに,30年余にわたる過疎化によって「第2の過疎化」という厳しい状況下にある。いわゆるリゾートブーム時には,この山村地域にとってリゾート開発は地域振興の強力な手段として期待されていた。その開発の対象となる農林地は,激しい過疎化によって管理の粗放化や耕作放棄,不在地主化が進行し,地域資源の維持管理やその有効な利活用が問題となっている。新潟県安塚町は県内でも激しく過疎化が進んだ東頚城郡にあり,近年は地域振興策として観光産業に力を入れており,1990年にリゾート法を活用してスキー場を開設させるなどリゾート開発が推進されている。新潟県のリゾート法特定地域にある既存のスキー場では,地元住民が,地元への利益還元や地権者としての発言権も残すために借地契約をとるところが多いが,安塚町では過疎化の影響によって農林地の小規模分散型の不在地主化が進行し,開発に対する地主の意見をまとめることが困難であったため,地元住民との借地契約とはならなかった。今後地元住民が開発資本との関係をどのように築いていくかが重要な課題となると思われる。

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© 1995 林業経済学会
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