1995 年 1995 巻 127 号 p. 215-220
今後の林政の中核に据えられた森林・林業の流域管理システムを活力をもって作動させ,また,行政管理システムに陥らないよう手を打つためには,「共」的管理をともなった新たな森林利用の進展に注目する必要がある。本稿では都市住民が参加し,「協約」に基づいて森つくりに取り組んでいる4つの事例をとりあげて分析し,その意義づけをおこなった。森林クラブによるものは,参加費を払ってでも山仕事をやりたい仲間が集まって分収造林事業として進められている。神奈川県では,都市住民が参加して自分たちの森つくりができるように,種々の支援策を施して実績をあげている。阿蘇グリーンストックは,グランドワーク型トラスト方式による次代に贈る環境の形成運動であり,特定都市民を組み入れた「拡大入会権」での田園リゾートが追求されている。株式会社たもかくでも,株主は共同利用地での「入会権」を有する会員であり,その利用に供する森づくりがおこなわれている。自ら身体的にかかわって自然の恵みを直接享受する「業」は,「環境の社会化」としての生業の系譜上にあり,「森業」と呼びたい。これからの流域社会再生にとって重要である。