林業経済研究
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国際化段階における森林所有者の現状と対応 : 宮城県鳴子町を事例として(1996年秋季大会自由論題論文)
伊藤 幸男岡田 秀二黒澤 徹
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1997 年 43 巻 2 号 p. 19-24

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抄録

本稿の課題は,世界的規模で様々な要請が示される段階における森林所有者の現状と対応について明らかにすることである。具体的には,宮城県鳴子町における国有林,大規模森林所有者,中小規模森林所有者の3つを対象とし,今日の山元の論理が如何なるものかについての把握に努めた。宮城北部流域において,川下主導による流域林業構造再編の方向が示されるなかで,国有林は,経営規程改定に伴って,木材生産の枠組みの縮小を主要な内容とする経営方針の転換と,なお未成熟な人工林資源を抱えるがゆえの資源面からの制約により,木材生産からの後退的対応が指摘された。事業体的性格を示す大規模森林所有者については,当面伐採量を増加させながらも,その対応は,生産の維持継続を前提とし,経営戦略として現れること,とりわけ現場段階でのコスト削減という点に特徴がある。中小規模森林所有者は,規模拡大型,現状維持型,後退的対応型の3つのタイプが見られるが,川下への木材の安定供給に係わっては,いずれのタイプにおいても価格面及び再造林費の補償が前提となることが明らかとなった。

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© 1997 林業経済学会
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