抄録
今後,皆伐・再造林を拡大させようとした場合,いかに苗木供給を確保しうるのか,苗木生産の担い手の拡大をどのように展望しうるのかが重要な課題となる。本稿では,造林や素材生産を行う林業事業体が苗木生産を行っている3つの事例を取りあげ,苗木生産の現状を把握するとともに,苗木生産の課題と今後の拡大の可能性に関する検討を行った。その結果,事例として取りあげた林業事業体においては,事業活動が多角化しており,そのなかに苗木生産が含まれる形となっているが,多角経営の方向性や苗木生産に着手した経緯,苗木生産に対する姿勢や意向はそれぞれ異なる点,需要に対応した苗木生産が行われており,造林事業との連携が比較的密接である点,苗木生産への新規参入にあたっては,自然条件や求められる作業の質などが生産状況に影響を与えている点,種苗組合等を通じたネットワークが新規参入者の技術面を支えている点などが把握され,林業事業体には対応力や柔軟性をもった苗木生産の担い手となる可能性もあることが示唆された。