アメリカでは1970年代以降,マウンテンバイカーによる林地・トレイル利用が進むにつれて,ハイカー等の他の利用主体や林地・トレイルの所有管理主体との競合・対立が深刻化した。IMBA(International Mountain Bicycling Association)は,これに伴う林地・トレイルの利用規制に直面したバイカーの危機意識を反映して,その社会的なレジティマシーを獲得するために1988年に設立された。以後,全国的な組織体系の整備を通じて,IMBAは,バイカーを代表した利害主張や政治的な働きかけ,安全・リスク対策のサービス提供等を行うと共に,各地での競合・対立の調整を積極的に担っていった。同時に,バイカー自身による持続的なトレイル整備を「責任ある利用」として掲げ,これをベースに他の利用主体や所有管理主体と連携・協働することで,その理解に基づく社会的承認を獲得していった。これらの組織的な活動と方法論を通じて,今日のアメリカにおいて,新興の利用主体であるバイカーは,林地・トレイルへのアクセスの確保に成功し,併せて自らを含めた林地利用の便益の最大化を導いている。