自然保護地域では,持続可能な観光利用を調整するルールの設定が欠かせない。本研究の目的は,訪問者の利用のルールに対する選好を把握し,施策を提言することである。対象地は,世界自然遺産への登録が期待されている奄美群島国立公園の金作原原生林である。メディアへの露出の増加などにより,観光客の増大が見込まれている場所でもある。本研究では,2017年8月に金作原原生林の訪問者を対象にベスト・ワースト・スケーリングを組み込んだアンケート調査を実施した。その結果,訪問者全体の施策への選好は「ガイド同伴の義務化」が最も望ましく,次いで,「シャトルバスの導入」,「協力金を募る」,「人数制限を設ける」,「規制はせずに自由に利用」という順であることが示された。また,個人の回答のクラスター分析からは,3群の異なる選好を示すグループが見出された。施策の導入の際には多様な観光客のニーズを考慮した選択肢の検討が必要であろう。