2018 年 64 巻 3 号 p. 8-15
歴史社会学などで近年発展の著しい「人の移動」研究の蓄積を踏まえ,大学卒業者名簿,学会名簿,引揚者記録等の史資料を手掛かりとして,森林技術者の外地からの引揚・復員と戦後林業・林政の関係を考察した。第1に,森林技術者の引揚・復員に大きな役割を果たした「外林会」の実態について,戦後日本林業・林政への影響のあったことを明らかにした。第2に,森林技術者の引揚・復員と戦後林業・林政の関係を考察するため,学会名簿,卒業者名簿を用い,数量的把握を行った。その結果,1) 林学会員2割強が戦中期に外地勤務であり,大正期卒管理職と昭和期卒若手の大きく2グループに分かれていたこと,2) 昭和期卒外地経験者の外地赴任先,戦後就職先は学校ごとに特色があること,3) 戦後,昭和期卒外地経験者の多くが林業関係の教育機関,行政に就業したこと,が見出された。