自然とのつながりの希薄化による様々な弊害が懸念され,自然と関わる文化の再構成は,現代社会において大きな課題となっている。日本国内では,早くから森林文化論が提起されてきたが,政策論にまで十分に展開してこなかった。そこで,本稿では食用植物・キノコの採取・利用を題材として,文化的要素を抽出し,さらに利用文化の盛衰を解釈することを試みた。採取前・採取時・採取後の過程にわけ,それぞれいくつかの側面に分けて文化的要素を抽出した。その結果,多様な文化的要素が抽出でき,そのいくつかが対象資源の意味付けに結びついていることが見出された。戦後における食用植物・キノコ利用の盛衰を整理したところ,幅広い意味づけを与えられたものが現代に残り,さらに,レクリエーションとして親しまれるようになっていると解釈された。また,それとは無関係に,自然環境および社会環境の変化により衰退・消滅を余儀なくされたものがあった。森林文化を再構築するには,人々による森林への意味付けを醸成する内からのアプローチと,それを取り巻く自然環境や制度を整える外からのアプローチがありうる。