抄録
「森林ボランティア」は,かつて新たな森林整備の担い手として行政から注目されていたものの,近年,団体数が減少する一方で,活動内容の多様化が指摘されるという,一見矛盾した状況にある。そこで,小論では活動,団体,参加者,ネットワークに注目し,まず文献調査により国内外における「森林ボランティア」の概念を把握し,次に東京都における多様化の実態と要因を聞き取りや参与観察で明らかにした上で,現状に即した解釈について考察した。文献調査から,日本の「森林ボランティア」の特徴は,森林での実践活動が中心であること,活動を行う基本単位が団体であること,市民による自主的な参加であることが分かった。実態調査から,現在の「森林ボランティア」は,1)普及啓発や環境教育等を含む直接的,間接的な森林への多様な活動を,2)任意団体やNPO,財団等様々な形態の団体に,3)市民や学生,企業等多様な立場の参加者が,4)ネットワークを通じて巻き込まれながら行われていることがわかった。「森林ボランティア」の現状は,活動や団体,参加者,ネットワークが多様化したために,市民団体を基本単位とした実践活動という従来の解釈で捉えることが難しい。