林業経済研究
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多摩産材の利用による経済波及効果の推計
東急池上線戸越銀座駅木造駅舎改修事業の事例
森井 拓哉 長坂 健司井上 雅文
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2020 年 66 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

多摩産材の利用による地域経済への影響を把握するため,多摩産材を利用した東急池上線戸越銀座駅木造駅舎改修事業による経済波及効果を推計した。東急電鉄担当者からの聞き取りおよび現地調査により,最終需要額は1,297万円となった。本事業で利用された多摩産材の多くは福島県で集成材加工されていることから,東京都,福島県,その他45道府県からなる3地域間産業連関表を作成し分析を行ったところ,生産誘発額は3,027万円(東京都1,013万円,福島県1,262万円,他752万円),粗付加価値誘発額は1,468万円(東京都596万円,福島県514万円,他358万円)となった。また,産業部門別の雇用誘発数は,福島県木材産業部門0.75人,東京都林業部門0.66人となった。本事業における多摩産材利用によって,東京都内で生じた経済波及効果の2倍近くが,東京都外で生じたことが明らかになった。さらなる木材利用の拡大と,それを目的とした施策の検討のためには,東京都による木材利用推進施策が全国の経済活性化に貢献している点を評価する必要がある。地域材利用の評価は,サプライチェーンに基づいた分析枠組みで行うことが重要である。

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© 2020 林業経済学会
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