抄録
製材工場における素材の入荷量,在庫量と価格の管理は,工場の経営利益に大きな影響を与えるだけでなく,工場の持続的な経営にも関わっており,重要な課題である。本研究は,スギ材生産量が多く,製材工場におけるスギ素材の割合の高い秋田県を対象とした。自己回帰分布ラグ (ARDL) モデルを構築し,入荷量,在庫量,素材価格の影響要因を定量的に解明した。単位根の存在ではなく,ラグ変数という脱落変数の存在が見せかけの回帰関係の原因だという研究成果を引用し,ARDLモデルから長期的関係及び誤差修正モデル (ECM) の分析を行った。分析の期間は,2005年1月から2020年12月までである。ARDLモデルの結果,長期的に,秋田県の製材工場においては,スギ中丸太(直径24~28cm)の素材価格と製材品価格(スギヌキ特等)との連動,入荷量と消費量との連動が確認できた。しかし,ARDLモデルから導出したECMの推定は,短期的に在庫量及び入荷量の決定は,消費量あるいは製材品出荷量の影響が強く,価格の影響が弱い結果であった。また,素材入荷量のECMは価格モデル及び在庫量モデルより速い誤差修正スピードを示した。