抄録
2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い避難指示が発令された福島県内の12市町村を管轄する5つの森林組合の経営の推移を明らかにした。被災森林組合の経営環境は組合地区の地理的特徴や避難指示区域の広狭,避難指示解除の進捗状況により異なるものの,いずれの被災森林組合でも放射性物質対策や海岸防災林造成などの復興事業が主要な収益源として位置付けられていた。原発事故以前は全国的な趨勢と同じく森林整備部門(造林・保育)から販売部門(素材生産)に収益源がシフトする動きも一部にみられたが,原発事故以降は復興事業の収益が計上される森林整備部門が肥大化したことで,事故以前よりも同部門の比重が増す収益構造となった。経営規模を表す事業総収益については,避難指示区域が組合地区内に広く残る一森林組合を除いて,復興事業がけん引役となり全国および福島県全体を上回る水準で推移する一方で,年次変動の幅が広がる傾向がみられた。被災森林組合は,地区内の森林に放射性物質が拡散する中で復興事業をテコに収益の回復を図ってきたが,同事業への収益源の傾斜は経営の不安定化を招いてもいた。