森林経営管理制度の導入に伴い,市町村森林行政の役割や管轄業務は増えている一方,その実施体制は脆弱だと指摘されている。本研究では,こうした市町村森林行政を補完する方策として,森林組合・コンサル・測量会社などの外部組織への業務委託に注目し,全国の1,612市町村および47都道府県を対象としたアンケート調査結果などをもとに,森林経営管理制度における業務委託の実態を明らかにした。その結果,森林経営管理制度関係業務の委託割合は森林法関係業務より高いものの,同制度を実施する市町村の約7割は自前で業務を行っていた。業務の委託先で最も多いのは森林組合であるが,データの取得や分析の業務はコンサル・測量会社への委託も多かった。また,市町村をサポートする組織の存在が業務委託の推進に影響していることが示唆された。業務委託を行う市町村ほど,森林経営管理制度に係る各業務の実施率が高くなっており,業務の進捗スピードの向上や高度化といった面でメリットがみられた。一方で,委託できる業務には限りがあること,人員が限られている市町村ほど委託が難しく,仕様書の作成や積算根拠の算定面でサポートが必要となるなどの課題も明らかとなった。