林業経済研究
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新型コロナウイルス感染症対策が国立公園に及ぼした影響の経済分析
木谷 惇志栗山 浩一
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2023 年 69 巻 3 号 p. 16-23

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抄録

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の感染拡大により国立公園の訪問者数が減少した。本研究の目的はCOVID-19 対策が全国34ヶ所の国立公園に及ぼした影響を分析し,今後の政策のあり方を示すことである。全国の国立公園利用に 関するアンケート調査を実施し,感染拡大前後の訪問データを収集した。このデータを用いて多重離散連続極値 (MDCEV) モデルによりCOVID-19の影響を推定した。結果は以下のとおりである。第1に,COVID-19の影響によって重症化リスクの高い高齢者の訪問数が減少したが, 感染リスクの低い自然型の国立公園への訪問数は減少していなかった。第2に,GoToトラベルキャンペーンによる旅費補助はCOVID-19の影響を補填するには不十分であり,COVID-19による訪問回数の減少分を100%埋め合わせるためには少なくとも訪問1回あたり2,000円以上の追加の旅費補助が必要であった。第3に,マイカー規制の緩和は,マイカー規制を設けている公園では感染拡大前の水準まで訪問数を戻すことが可能だが,規制を行っていない公園の訪問者が減少することが示された。

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© 2023 林業経済学会
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