抄録
2001年の森林・林業基本法で山村への定住促進施策が新たに位置づけられ,森林・林業基本計画でも山村地域の定住の促進,都市と山村の共生・対流を推進することとされ,生活環境の整備,拠点集落への重点化などが打ち出された。これに沿って,本稿は山村問題に関する四半世紀の林業経済研究を振り返った。その結果,コミュニティの維持や生業が集落だけでは解決し得ないことが指摘され,小規模多機能自治の登場に触れて市民セクターの成長にも関心が置かれている。山村の価値観の主観的認識は移住の強い動機になるが,定住の条件整備に問題は残る。森林ボランティアに進展が見られる一方,市民による森林管理はコモンズやガバナンスを越えて不特定多数の一般市民の関与を整理する段階にあることが指摘された。自伐協の活動は,その際の中間支援組織として評価できる。さらに,原発事故からの復興にあたってレジリアンスの考え方が提示された。今後は山村や森林管理の主体に新たな展望を描ける研究を期待する。