抄録
国立公園では,自然環境の保全や施設の維持管理のための予算の不足などにより,利用者に費用負担をもとめる事例が増えてきている。入園料や入山料の導入は,審議会等でも度々議論の対象となってきたものの,自然公園制度上に位置づけられるには至っていない。一方で,2023年度の調査では全国の国立公園で127件の入域料,自治体・民間の資金調達,保護と利用の好循環の取り組みが確認されており,年々増加傾向にある。本研究では,国内外の費用負担に関する議論を踏まえて,国内における検討経緯と導入事例を分析した。それにより,どのような事業に予算の不足による影響があるかを明確にし,公費と利用者による費用負担との分担を検討し,事前の調査結果を踏まえて地域関係者と合意形成を行い,公平性に配慮した仕組みづくりが求められるとの結論を得た。その運用において,事前の周知,信頼性・透明性の確保,モニタリングを伴う必要があるが,関連する研究は少なく,その発展が期待される。