抄録
採草・放牧・火入れという人為的攪乱により形成され,維持されてきた国内の半自然草原が過少利用により面積を減ら
している。本研究は,熊本県阿蘇市の事例に基づき,日本型直接支払を構成する3つの直接支払における半自然草原の維持管理に関わる活動の位置づけを整理し,過少利用下においてこれら活動を支えているメカニズムを明示した。そしてその運用の実態を分析し,以下の2点を明らかにした。第一に,日本型直接支払の制度設計は半自然草原における農業生産活動の二層構造に対応できていた。そのなかで,とりわけ過少利用下にある半自然草原において,将来的な農産物生産の可能性を維持する活動に対する支払いが組み込まれていた。第二に,直接支払の運用方針や再配分ルールの策定,集落協定と活動組織の広域での設立により,複数の直接支払の間で補完関係が構築され,直接支払を受ける現場レベルで総合化されることによる統合的運用が可能となっていた。一方で,有畜農家の減少や維持管理の担い手の高齢化と減少が進むなか,農業生産活動への支援を通じた半自然草原の維持という制度が前提とする構造の対応は,今後の研究課題となった。