日本女性骨盤底医学会誌
Online ISSN : 2434-8996
Print ISSN : 2187-5669
膀胱瘤の重症度と排尿機能の関係に関する検討
小林 英樹羽根 田破大竹 裕子吉良 聡谷口 珠実荒木 勇雄武田 正之
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2015 年 12 巻 1 号 p. 107-110

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抄録

骨盤臓器脱の中でも膀胱瘤の場合、POP-Q stageで3以上の場合にはしばしば尿道がキンクしてしまうので、排尿障害を生じることが多い。膀胱瘤の程度とIPSS、OABSS、ICIQ-SF、尿流量測定、残尿量の関係をあらためて検討してみた。対象は2010年1月から2013年3月までに当院泌尿器科外来を受診された膀胱瘤の患者で治療開始前にIPSS、OABSS、ICIQ-SF、尿流量測定、残尿測定の記録が得られた患者である。POP-Q stageは初診時の外来での内診によって記載されたものを採用したが、実際の外来診療においてstage2とstage3を明確に区別することは困難であり、集計はstage1、stage2-3、stage4の3群において行った。膀胱瘤の程度が増悪するにつれて、尿流量測定も増悪の傾向が認められ、残尿量も増える傾向が認められた。IPSSの排尿症状スコアーはstage2-3でやや増悪の傾向が認められた。過活動膀胱の合併率は膀胱瘤の程度が軽いほど高い傾向があり、IPSSの蓄尿症状スコアーにおいても膀胱瘤の程度が軽いほど高い傾向が認められた。切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁の合併率はどちらも膀胱瘤の程度が軽いほど高い傾向があった。その結果を反映するようにICIQ-SFはstage1において有意に高スコアーであった。外来受診している患者を対象とした研究であるため、バイアスがかかっている点が問題ではあるが、これらの結果は骨盤臓器脱の自然史を考える上での様々なヒントを与えてくれるものと思われる。

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