2021 年 17 巻 1 号 p. 14-18
本研究では産後1年以内の女性101 名を対象として、尿失禁有訴率および医療機関受診率について調査することを目的とした。自記式質問票にて妊娠前および妊娠中の尿失禁の既往について聴取し、International Consultationon Incontinence-short form (ICIQ-SF)を用い産後1 年以内の現時点における尿失禁有訴率を調査した。また、産後における尿失禁の有無により対象者特性を比較した。さらに、産後の尿失禁のために医療機関を受診したことがあるか、産後の尿失禁軽減のために専門家による治療を受けたいと思うかアンケートにて調査した。 妊娠前、妊娠中に尿失禁を有していたものはそれぞれ4%、64%であった一方、産後1 年以内の現時点において尿失禁を有していたものは32%であった。また、産後に尿失禁を有していたものでは、尿禁制が保たれている女性と比較して、妊娠前および妊娠中の尿失禁有訴率が有意に高かった(それぞれP<0.05, P<0.001)。産後に尿失禁を有していたもののうち、産後の尿失禁のために医療機関を受診した経験を有するものはわずか6%であった一方、19%は専門家による治療の希望があると回答していた。本邦において、産後1 年以内の女性のうちの約3 割に尿失禁を認めた一方で、産後の尿失禁のために医療機関の受診に至っているものはごくわずかであった。