2025 年 21 巻 1 号 p. 84-89
緒言:腟炎を伴った高度骨盤臓器脱により腟壁が穿孔し小腸脱出を起こした症例を経験した。また、尿道カテーテル留置中に尿道腟瘻を併発したためその経過も含めて報告する。
症例:未治療で高度の骨盤臓器脱を有する77歳女性が、500mlを超える慢性的な残尿を認め、泌尿器科から紹介された。初診時、腟壁は炎症が強く、ダグラス窩に接する後腟壁に裂傷ができており、この孔から小腸が腟内へ脱出していた。緊急手術のための術前検査で高度貧血(Hb4.9g/dl)が判明した。全身と局所の状態が不良なため、この時点での骨盤臓器脱整復は延期し、消化器外科と合同で腹腔鏡下および経腟的に腸管の還納と穿孔部の閉鎖処置を行った。創部の治癒は順調であったが、退院後尿道留置カテーテルによる尿道腟瘻ができた。後に貧血の原因は出血性十二指腸潰瘍と診断され、貧血が治るまでの間、慢性的な尿閉と水腎症への対応として、膀胱瘻造設と両側尿管ステント挿入を必要とした。初診から約1年後に、仙棘靭帯子宮頸部固定術とメッシュスリングの挿入からなる骨盤臓器脱整復と尿道形成術を行い、治療は完了した。
考察:高度骨盤臓器脱の保存管理にはしばしば泌尿器科的介入と生活面の指導が必要になる。本症例は、初回の緊急手術では裂傷の修復だけを行い、全身と局所の状態が改善してから待機的に骨盤臓器脱手術を行ったことが治療の成功につながった。