日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: E15
会議情報

T11 森林をめぐる協働・パートナーシップはどこまで進んでいるのか?―現状と課題―
森林ボランンティアと行政との関係性からみる新たな可能性
中国5県を事例に
*井原 弘恵伊藤 勝久
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
森林ボランティアと行政との関係性からみた新たな可能性_-_中国5県を事例に_-_○井原弘恵(島根大院生資) 伊藤勝久(島根大生資) 1.背景近年全国各地において活動が活発になってきた森林ボランティアは、その活動意義が社会に認められつつあり、行政側からの注目や支援も大きくなっている。森林ボランティアは林業労働力の代替としての機能には限界があるが、他の市民への普及・啓発やグリーンコンシューマーへの発展などがその意義である。また、今後の森林・林業政策には市民公共性〈SUP〉1〈/SUP〉が付与されることが必要と思われる。そのため森林ボランティアは市民公共性を付与する点において、市民層の意見集約の指針となったり、その代表となりえる要素は十分に持っていると思われる。現在、草の根的な森林ボランティア活動をネットワーク化し、行政・企業とも連携をとろうとしている動きが見られる。またこの動きはとりわけ大都市部において見られることが多い。今後においては各地域レベルにおける形成が望ましく、地域ごとに行政・企業などと協働関係(=partnership)を築けることに期待がなされている。2.課題と方法本研究においては、現在の地域レベルでの森林ボランティア活動の取り組みが、行政・企業等(主に行政)とどのような関係を築けているのかを、調査し明らかにすることにより、森林ボランティア活動における問題と今後のさらなる森林管理における実効的な可能性を見出すことである。方法としては、中国5県と徳島県等の県庁およびいくつかの森林ボランティア団体にヒアリング調査を行った。調査項目は、各県の森林ボランティア団体数、各団体と県行政との関わり方、県や森林ボランティア団体の取り組み等について、などである。3.結果調査結果より、各県ともそれぞれの取り組みがなされている。まず6県のうち岡山県を除く他の5県には森林ボランティア団体が存在し、その数は5_から_37団体までと様々であった。団体間でのネットワーク組織については広島県、山口県のみにおいてネットワーク組織が形成されており、他の県には形成されていなかった。県行政と各森林ボランティア団体とは、それぞれにおける関係が築かれており一概には言えない。そこで県行政と各団体間との関係において、森林ボランティア団体の形成過程について注目すると、_丸1_自発的に形成していた県と、_丸2_県行政が発生を促進させた県の二つのグループに分かれることがわかった。_丸1_は自発的に形成され、自主的に活動している森林ボランティア団体に、県が助成・協力しているものである。また県のイベント等の取り組みへの支援の要請が、森林ボランティア団体になされている。これには島根県、鳥取県、広島県が該当する。_丸2_は県が森林ボランティアを育成し、そこから自主的な活動が展開されるように人的基盤作り等を支援しているものである。これらの県では森林ボランティアの参加や、それらによる市民への指導を中心にした政策がある。これは徳島県、山口県、岡山県が該当する。表1はこれをまとめたものである。しかし各県ともに、ここ数年において森林ボランティア等の取り組みがされ始めたことや、林野率が高い県などではまだまだ市民の関心が低いことも言える。4.考察調査において明らかとなった二つのグループ内において、_丸1_の3県ではネットワーク組織が、広島県にのみ森林ボランティア団体間独自に形成された。この事と他の2県の取組状況などから、島根県→鳥取県→広島県の順に森林ボランティア団体と県の関わりは深く、協働関係構築へも近いと思われる。_丸2_では県がボランティアの育成、特にボランティアリーダーを育成し、山口県、徳島県ではそれらを中心に団体を設立している。そして山口県ではさらにネットワーク組織の形成も行われている。岡山県では自主的な活動が展開されることに期待しているところである。これらより、岡山県→徳島県→山口県の順で行政主導型の発展が伺える。 
著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top