抄録
地域社会における森林の管理・利用のためのパートナーシップ形成に果たす行政の役割と課題について,住民団体・行政系の団体を含む都市部19団体・農山村部13団体から得たアンケート調査結果をもとに考察した。その結果,地域社会の背景によって,行政には活動場所の確保や資金・資材面の援助といった住民団体への後方支援から活動そのものの運営まで様々なレベルの役割があることがわかった。具体的には,都市部では,行政は住民の自発的な森林保全活動を尊重しながら,住民にとってネックとなる活動場所の安定的確保や資金面での援助などの役割を果たしているが,農山村部では行政が住民や都市市民による森林ボランティア活動を当初からリードするケースが少なくなく,その役割も都市部と異なりボランティア活動の運営そのものに関与していることがわかった。今後,行政には森林をめぐる法整備などを通じて住民団体の活動を支援する一方で,地域社会の関係者間の意見を調整する役割が期待されている。