日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: J08
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林政 II
間伐材利用の現状と課題
*青柳 里緒宮林 茂幸関岡 東生
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抄録

 戦後の拡大造林政策に伴って、わが国には約1000haの人工林が造成され、現在それらの人工林は成熟するとともに、間伐期に達している。しかし、木材価格の低迷等によって間伐の実績が極めて低調に推移している。こうした中で、森林基本計画において長伐期施業が推進され、それに伴って間伐対象林分についても間伐対象齢級を高めることになった(昭和50年:_III_、_IV_齢級→昭和54年:_III_から_V_齢級→平成2年:_III_から_VI_齢級→平成8年:_III_から_VII_齢級→平成12年以降:_III_から_IX_齢級)。
 従来、スギ、ヒノキを主体とする小径木優良材生産における間伐は、_IV_、_V_、_VII_齢級林分で行われるのが標準とされている。しかし、林業労働者の高齢化や林業経営の不採算性の増大等々により、従来標準とされた作業体系に基づいた間伐の実施は実現しておらず、現状下においては間伐対象齢級が高齢級にまで拡大していることも事実である。
 本報告では、わが国における間伐実施の現状を各都道府県別に把握することによって、森林資源の現状と間伐実施の類型化を行うことを目的としている。なお、間伐実施の現状については、間伐補助の実績を手がかりにしてとりまとめた。
 間伐の現状把握に関しては細部にわたる資料データの入手は困難である。こうしたことから、本報告においては、各都道府県における間伐補助の実績に関するデータ(間伐補助実績にしめる各齢級別割合、林野庁資料)をもとに、全国ベースでの整理と都道府県別をベースとした整理を行い、さらに各都道府県別の森林資源状況との関係性をふまえて間伐の類型化を行った。今回のデータは、間伐補助対象となった林分について算出されたデータである。よって、実態との乖離があることは否めない。とはいえ、全国ベースでのデータを都道府県別に整理することによって、森林資源と間伐実施における関係と特徴が明らかになるといえる。すなわち、同類型に分類される県どうしは、間伐形態が同様の特徴を持つと考えることができる。
 次に、平成12年に間伐補助対象齢級が_IX_齢級にまで延長さされたことによる影響についても考察を行い、そのことによって間伐のあり方がどう変わったかについて明らかにしたい。具体的には平成9年、平成10年の平均における齢級別間伐実施面積割合と、平成12年から平成14年の平均における同データを比較する方法をとる。
 間伐の実施状況が、各グラフの形状より、中齢級間伐、低齢級間伐、高齢級間伐の三つに大きくに類型化されることが明らかになった。平成9年から平成10年の分析結果と、平成12年から平成14年を比較すると、前者では中齢級間伐が、後者では高齢級間伐が全国の都道府県数の過半数をしめていることがわかった。このことから、緊急間伐5カ年対策以降、高齢級の間伐を重視する県が増加してきていることが予測された。
 今回の分析を通して明らかになった課題は、補助対象となった間伐対象林分のみをカウントしたデータを元にした分析結果と、実態との矛盾の有無を解明することである。
 その為には、各地域の人工林面積に対する間伐実施の実態を明らかにするとともに人工林面積全体に対する各齢級別間伐面積の割合を算出し、比較するとより正度の高い類型化が可能になると考える。さらに、これらの分析結果と各地域の現状との整合性をとり、これからの森林整備指針と間伐及び間伐の利用のあり方について明らかにしたい。

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© 2004 日本林学会
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