日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: J10
会議情報

林政 II
森林認証制度に対する道内木材流通・加工企業の意識と取り組み
*福田 匡史
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景と課題】近年国内において持続的森林経営を実行する手段のひとつとして森林認証制度(以下、認証制度)への関心が高まっている。現在、山側と消費者側における認証制度研究はあるが、流通・加工過程を担う木材関連事業体(以下、関連事業体)の視点からの研究は進んでいない。しかし、関連事業体の認証制度に対する意識や取り組みは今後の認証制度の方向性に影響を与えるものだと考えられる。
 本研究では、関連事業体のFSC認証を中心とした国内での認証制度を巡る現状に対する意識とこれからの取り組みを明らかにし、考察を加える。
【研究方法】国内・道内での現状を把握するために選考文献等の検討を行った。また、認証制度に対する関心の高い道内事業体として「北の森林認証制度研究会」参加企業5社(A_から_E社)と、下川町森林組合を含む下川町内CoC認証取得4事業体を対象に認証制度の現状への意識とこれからの取り組みについて聞き取りを中心に調査を行った。
【結果・考察】全体的な傾向として、認証材流通によるプレミアムは期待できないと考えているが、認証取得によって消費者への環境配慮アピールの効果があると考えていた。また、各事業体の置かれている状況と認証制度に対する意識や取り組みへの違いの関係性から類型化を行った。
タイプ1;A・B社の製材業者2社があてはまる。一般市場での認証材需要がない状況から、認証制度に意義を見出していない。卸売業者等の契約企業との取引が業務の中心で、末端消費者との接点が少なく直接的な環境配慮アピールの必要性がないことが一要因であると考えられる。
タイプ2;C社があてはまり、住宅用材流通・建築業務を行っている。消費者との接点が比較的多く、消費者に向けたなんらかの環境配慮アピールの必要性を認識している。その中で、複雑な住宅業界の流通経路に対する認証制度の適応や、認証材需要がない点を踏まえてISO1400環境マネージメントに有効性を見出している。
タイプ3;D・E社があてはまる。D社は輸入材流通を主に行っている。E社は製紙業系列の事業体として社有林経営・素材生産、また製紙原料の調達を行っており、どちらも所有森林への認証取得を検討している。認証材利用を主目的とせず、認証取得による消費者への環境配慮アピールに意義を見出している。
タイプ4;下川町森林組合が主導してFSC認証を取得し、持続的森林経営の確立と認証材流通において山村と市場の新たな関係を構築しようとしている。この中で、町内の事業体はCoC認証を取得し、認証材の需要開拓と市場の創出を目指している。
消費者への環境配慮アピールの効果を期待しえいるタイプ3による認証取得は、消費者に対して「森林認証がされていれば環境にやさしい」というイメージを与える可能性がある。欧米などの木材輸入国において認証材の生産・流通経路が確立している状況を考慮すれば、この動きは安価で大量の輸入認証材の流入につながる可能性が考えられる。一方で、地域で生産された材の需要拡大が重要な問題となっている山村が、製品差別化の手段として新しい山村と消費者の関係を構築できる可能性がある。今後、地域林業の特色や認証材需要の確保などが主な課題となるが、持続的森林経営を消費者側から支える手段として有効性があると考えられる。

著者関連情報
© 2004 日本林学会
前の記事 次の記事
feedback
Top