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第115回 日本林学会大会
セッションID: J14
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経営 II
丸太価格に基づく拡張減反率の推定
*広嶋 卓也
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キーワード: 丸太価格, 減反率
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抄録

 減反率とは,新植された森林がガンマ分布などの寿命分布に基づき,特定の齢級で伐採される確率を表すもので,我が国の収穫予測に応用されてきた.一方,今日では実践的な収穫予測を行う上で,森林を取り巻く経済因子の影響を考慮することが重要であるが,従来の減反率の密度関数では,パラメータが物理的な意味を持たないため,そこに経済因子を組み込むことはできなかった.これらの欠点を改善したのがYoshimotoの拡張減反率で,そこでは密度関数のパラメータに物理的な意味を持たせることにより,丸太価格,伐採費用,利率などの経済因子が伐採性向に与える影響を説明することに成功した.ところが拡張減反率の研究はこれまで実験の域を出ず,それを実践的な収穫予測に適用するための方法は十分に議論されてこなかった.そこで本論では,伐採性向に影響を与える経済因子として丸太価格を取り上げ,丸太価格の変動に応じた拡張減反率を全国民有人工林における収穫予測に適用する方法を考察した.
 拡張減反率の密度関数は,非定常ポアソン過程に基づく待ち時間の確率として表される.拡張減反率では,森林経営者は伐採のタイミングを判断するための判断基準を持っており,それが時間とともに増加してゆき,閾値に達したときに伐採が行われるものと想定されている.拡張減反率を特定の林家の収穫予測に適用する際には,判断基準と閾値を恣意的に決定できるが,広域の収穫予測に適用する際には,それらを推定する方法は明らかにされていない.
 まず,全国民有人工林における伐採齢平均が全国スギ中丸太価格と明確な負の相関を有することに着目し,拡張減反率の判断基準として丸太価格を利用することを考えた.そして判断基準関数として,林齢とともに変化する森林の価値を丸太価格で表現した,丸太評価価格_-_林齢曲線を提案した.さらに,このような判断基準関数を考えた場合,その閾値は,全国森林経営者の平均予想価格と解釈できることから,閾値の将来的な推移を予測する際に,価格変動のランダム・ウォークモデルの概念を取り入れた.
 この丸太価格に基づく減反率モデルは,初期値として伐採齢平均を与えれば以降は丸太価格のみに基づき確率分布が決定する.

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© 2004 日本林学会
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