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第115回 日本林学会大会
セッションID: J20
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経営 II
トレーニングデータの選定方法がIKONOS画像の樹種分類に与える影響
*宮地 洋輔高橋 與明山本 一清
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抄録

1. 目的
 スギ・ヒノキは我が国の人工林面積の68%を占める代表的な造林樹種であるが、LANDSATなどこれまでの衛星のセンサでは反射特性が似通っている両者の判別は困難であるため、同一カテゴリとした樹種判別などが行われてきた。そのような中で、近年運用が開始された高分解能衛星や航空機観測による両者の分類手法の開発が試験的に行われている。
本研究では、高分解能衛星IKONOS画像によるスギとヒノキの分類可能性について検討するとともに、その精度にトレーニングデータの選定方法が与える影響についても評価することを目的とする。
2. 対象地と使用データ
 愛知県東加茂郡稲武町にある名古屋大学大学院生命農学研究科附属稲武演習林内のスギ及びヒノキ人工林を対象とした。今回使用したデータはIKONOS衛星のパンシャープン画像(2002年8月25日午前10時48分撮影、解像度1.0m、R、G、B、NIRのマルチバンド構造)と、航空機搭載型LiDARによって取得されたDSM(2001年8月17日観測、解像度0.5m)である。また現地を撮影したオルソ空中写真を現地調査に使用した。
3. 方法
 分類対象カテゴリ(樹種)として、スギ、ヒノキの他、調査地にわずかに侵入または植栽されたアカマツ及びカラマツを加えた4樹種を選択した。現地調査により各樹種群の境界をポリゴン化し、この領域を切り出したIKONOS画像を対象に解析を行った。まず、ポリゴン内全画素からなるトレーニングデータセット(APX-DS)、IKONOS画像の各バンドに3×3 window近隣最大画素値抽出処理を行って抽出した画素からなる4種のトレーニングデータセット(B-IKONOS-LMDS、G-IKONOS-LMDS、N-IKONOS-LMDS、R-IKONOS-LMDS)、LiDAR-DSMに同様の処理を実行することで抽出した樹冠頂部を含む画素からなるトレーニングデータセット (LiDAR-LMDS)、LiDAR-DSMから作成した陰影画像から日向日陰の分割を行って作成したトレーニングデータセット(SNY-DS、SDW-DS)、以上8種のトレーニングデータセットを作成した。それぞれのデータセットにおける樹種別反射特性を比較し、また最尤法による教師付き分類を行って、トレーニングデータ選定方法による分類精度の違いについて検証した。
なお、教師付き分類は、シグネチャの再分類と、ポリゴン内全画素を対象にした分類を行った。
4. 結果と考察
 全体の分類精度(Kappa Statistics)が最も高かったのは、シグネチャの再分類ではLiDAR-LMDSを用いた場合であり、分類対象をポリゴン内全体に拡張した分類では可視バンドのIKONOS-LMDSを用いた場合であった。また、APX-DS、SNY-DS、SDW-DSの分類精度の間には大きな差異はみられず、今回用いた陰影分割法では陰影効果による分類精度の低下は示されなかった。
 樹種別に分類精度(Producers Accuracy)を算出したところ、LiDAR-LMDSを用いたシグネチャの再分類において全ての樹種の分類精度が最大値を示し、ヒノキは80.15%、スギは54.00%、アカマツ、カラマツはそれぞれ68.29%、48.33%であった。一方、ポリゴン内全画素を対象にした場合は、SDW-DSをトレーニングデータとして分類を行った場合にヒノキの分類精度が最大値(78.60%)を示し、またG-IKONOS-LMDSをトレーニングデータとして分類を行った場合にスギの分類精度が最大値(70.17%)を示した。シグネチャの再分類で精度が高かったLiDAR-LMDSを用いた場合はカラマツの分類精度が最も高かったが、どの樹種の分類精度もAPX-DSをトレーニングデータとして用いた場合とあまり変わらなかった。
本研究により、樹種別分類精度がトレーニングデータの選定方法によって異なることが示唆された。また、IKONOS画像を用いた樹種分類では、トレーニングデータの選定方法によってはスギが70%、ヒノキが78%程度の精度で分類できる可能性が示唆された。

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© 2004 日本林学会
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