日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: K14
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スイングヤーダ集材のシミュレーションによる検討
*櫻井 倫仁多見 俊夫小林 洋司
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抄録

1. はじめに
近年、急傾斜地向けの集材機械としてスイングヤーダが普及しつつある。スイングヤーダの作業法はタワーヤーダと類似しているが、架線の架設・撤去がタワーヤーダと比べて速い一方で、集材距離や牽引力はタワーヤーダより劣り、作業可能な範囲が狭く集材作業そのものは遅く、間伐向けの機械である。また架線の張り上げ高さが低いため定性間伐よりも列状間伐に用いられることが多い。
本研究ではスイングヤーダを使用した列状間伐作業を対象に、シミュレーションにより功程および作業コストを算出し、伐列の幅、長さ、および架線の張り替え間隔について検討を行った。

\section{シミュレーションの概要}
シミュレーションに与えるデータは2002年に大分県本耶馬溪町で観測したコマツHC-30型のデータを使用した。要素作業として架線架設、架線撤去、架線張り上げ、搬器空走行、索緩め、フック引出し、荷掛け、フック巻上げ、搬器実走行、荷降ろし、荷外し、その他整理等を想定した。
シミュレーション内における各要素作業時間は、時間観測により得られた結果を利用し、乱数により与えた。架線架設および撤去についてはサンプル数が少ないので平均値を代表値とした。架線張り上げ、索緩め、フック引出し、荷掛け、フック巻上げ、荷降ろし、荷外しについては作業時間の分布を対数正規分布により近似した。搬器の走行速度については速度を対数正規分布により近似して求めた。
なお観測対象とした現場では、スイングヤーダが単独で作業をしており、架線下の集材された全木材が集材の障害となっていた。スイングヤーダの側にプロセッサを配置して集材された全木材をすぐに造材すれば、架線下が常に整理された状態となりスイングヤーダの作業功程が向上する[1]。そこで本研究ではプロセッサが常にスイングヤーダに同行するものと想定し、架線下の全木材による遅延はすべて排除してシミュレーションに与える作業時間を構築した。

3. 検討した条件
構築したシミュレーションをモデル伐区に適用し、伐列長さ、架線の張り替え間隔および伐列幅について検討を行った。
想定した伐区は一辺を道路に接する長方形の伐区で、道路から見た間口の幅は100m、奥行きは伐列長に依存する。伐列長について40mから140mまで20m刻みで設定し、また伐列幅および架線の張り替え間隔について、1伐2残、1伐3残、1伐4残、2伐4残、2伐6残、2伐8残の6通りを想定してシミュレーションを行い、作業功程を比較した。
2伐n残の作業においては伐列の中間に索を張り、一度の張り替えで2列の集材を同時に行うものと想定した。ただしフックの引出し、および巻上げにおいて距離が伸びるため、架線高さ1mを想定して斜め方向に引き出す長さを計算した。立木は1.8m間隔で植栽されたと想定し、時間観測を行った林分のデータに従って立木幹材積および立木の残存率を推定した。

4. 結果
伐列の幅および架線の張り替え間隔について比較すると、同じ伐列長ならば架線の張り替え間隔が短い方が有利となった。また1伐と2伐を比較すると、同一の間伐率であっても架線の張り替え回数が少ないため、2伐とする方が高い功程が得られた。ただし伐列が長くなると集材に要する時間が長くなり、架線の張り替えにかかる時間が相対的に減少する。そのため伐列が長いほど1伐と2伐の差は小さくなった。
一方伐列の長さについて比較すると、1伐n残の作業では伐列長80mのとき最も高い功程が得られ、2伐n残の作業では伐列長60mで最も功程が高くなった。

5. おわりに
本研究により、スイングヤーダを用いた列状間伐の集材作業について伐列の長さ、幅、間隔による作業功程の動向を明らかにした。今後は作業にかかる費用および道路の開設費用も考慮して最適な林道密度について明らかにしていく必要がある。

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© 2004 日本林学会
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