日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: L17
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T6 森林の分子生態学
フタバガキ科Shorea属のDNA変異と系統関係
*上谷 浩一原田 光舘田 英典
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抄録

フタバガキ科は,東南アジア低地熱帯林で優占する林冠構成種である.本研究では,DNA変異量と系統関係を推定するために,Shorea属とその近縁属,57種・88個体について,ホスフォグルコースイソメラーゼ(PgiC)遺伝子の部分塩基配列(約1250塩基)を決定した.系統解析の結果,ハプロタイプは大きく6クレードに分けられた.サイト当たりの塩基置換数はクレード内で0.008_から_0.015,クレード間で0.025_から_0.055であった.得られた遺伝子系統樹は,以前研究された葉緑体遺伝子系統樹とほぼ一致したが,葉緑体系統樹でHopeaの姉妹群であったNeobalanocarpusは,PgiC遺伝子系統樹ではWhite Merantiの中に含まれた.この結果は,NeobalanocarpusHopeaShoreaの雑種由来であることを示唆する.Shorea属内のYellow Meranti, Balau, Red Merantiの各グループに属する種は,系統樹上でもそれぞれグループを作った.葉緑体では支持されなかったRed Merantiの単系統性は,PgiC系統樹において高い確率で支持された.しかし,Red Meranti内の5セクションの単系統性は支持されず,同一種内のハプロタイプが近縁種間で入れ子になる例や,遠く離れた位置にくる例が見られた.これは,急速な種分化によって維持されている祖先多型や種間交雑が原因であると考えられる.本研究で,PgiC遺伝子配列が葉緑体遺伝子より高い変異性を示し,属内の系統解析に有効であることが示された.

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© 2004 日本林学会
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