日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P1035
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生態
異なる光環境に対する落葉性高木7種の若木の樹冠部の対応
*高橋 美雅嵜元 道徳
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抄録

 原生的な冷温帯スギ・落葉広葉樹林において、林冠を構成する主要な落葉広葉樹はブナ、コハウチワカエデ、ミズナラであるが、そこには、陽樹的なミズメ、ウリハダカエデ、アカシデ、イヌシデも点在する。それぞれの地域の森林の構成や動態を考えるうえでは、陽樹的な樹種も含めて若木の特性を比較することが必要である。そこで、本研究では、耐陰性の異なる7種の若木について、樹冠、シュート、葉の3つのレベルについて、異なる光環境での形態および可塑性の傾向と度合いの比較解析し、異なる光環境への対応の違いを明らかにすることを目的とした。 本研究の結果から、陰樹的なブナ、コハウチワカエデ、ミズナラは、樹冠、シュート、葉のすべてのレベルで、形態的可塑性を発達させており、被陰条件下で、被陰に順応するのに有利な形態をとっていることが明らかになった。一方、陽樹的なミズメ、ウリハダカエデ、アカシデ、イヌシデは、葉レベルでは可塑性を示したが、樹冠やシュートレベルで、被陰への順応に有利な形態への可塑性発達がほとんどなかった。陰樹的な3種は、樹冠やシュートといった高次の形態レベルで大きな可塑性を発達させることによって、強度の被陰条件下での存在を可能にしていることが示された。また、林縁や開地といった明るい環境における7種の形態の比較から、樹冠深と形状比、最大の当年性枝長、当年性枝長の合計について、ミズメ、ウリハダカエデ、アカシデ、イヌシデは、ブナ、コハウチワカエデ、ミズナラと比べて、上方への素早い成長に有利であると考えられる形態を示した。葉レベルの可塑性は陰樹・陽樹で違いは特に認められず、樹冠やシュートレベルでの形態が、種間競争を通じて、明るい光環境での生存の種間差に働いていると考えられた。

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© 2004 日本林学会
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