抄録
1.はじめに造林地における獣害への物理的な防除方法のひとつである単木的防護処理は,一部の資材が破損してもその被害は全体に及ばない利点があり,有効な防護手段であると考えられる。本研究では,生分解性の不織布により作られた防護用の筒が,若齢人工林の植栽木へのノウサギによる獣害の防護効果が認められるかを検討した。2.調査方法調査は,関東森林管理局東京分局茨城森林管理署高萩事務所管内の上君田国有林(茨城県高萩市柳沢)76ろ6林小班および79に7林小班にて行った。これら林小班内のスギおよびヒノキ造林地(3から4年生)内で,2000年にそれぞれの本数がほぼ同数(約100本)になるように不織布を設置した試験区(不織布区)と設置しない試験区(対照区)を1組として設定した。設置数はヒノキで4組,スギでは1組である。不織布区では,竹棒を芯に幅15cm,長さ40cmの不織布シ_---_トを2枚組み合わせて筒状にし,苗木を覆うように設置した。設置後,樹高の測定およびノウサギによる被害形態とその高さを2000年,2001年および2003年の秋にそれぞれ測定した。直径の測定は高さ100cmの位置とし,2003年のみ計測した。3.結果および考察調査期間内(2000年から2003年)における植栽木の枯死率を比較すると,ヒノキ2およびヒノキ3試験区では不織布区の枯死率が高かったが,残りの試験区で対照区の値が高い傾向にあった。同様にノウサギによる被害率を比較するとスギ試験区を除き,全ての試験区で対照区の被害率が高い傾向にあった。一方,樹高成長および直径の場合,相反する結果が試験区間で見られ,明瞭な傾向は得られなかった。一部の個体では不織布を着けることにより,葉および枝のバイオマスの低下が見られた。不織布で覆われた部分では,光量の低下や気温の上昇などの環境変化が起きていることも考えられ,これらの要因が成長を抑制している可能性がある。不織布を設置した場合,樹高や直径成長が抑制されるか否かは今後検討を要する事項である。ノウサギによる被害形態は,スギでは枝葉の採食が中心であるが,ヒノキでは樹皮への採食がより大きな割合を示していた。また,これら被害が発生した高さを比較してみると,不織布で覆われている40cm未満の被害頻度に大きな違いが認められた。対照区の一部の個体では地際付近(0cmから30cm)の被害により,幹の形質の低下(幹の曲りや株立ち状の幹など)を招いていた。このことから,不織布の設置は枯死率や被害率の軽減のみならず,地際付近の被害率の軽減することにより,幹形質不良木の割合を低下することができる可能性が示唆された。今回の結果から,不織布を素材とした円筒には獣害への防護効果があることが確かめられた。また,不織布は生分解性の素材であり,設置から撤去までの工程を考慮した場合,防護用資材として利用する利点は大きいと考えられる。