日本林学会大会発表データベース
第115回 日本林学会大会
セッションID: P3034
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造林
山地帯落葉広葉樹林における植物群集の構造と地形の関係
*丹羽 花恵
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抄録

はじめに:森林は木材生産以外にも多様な機能があり、多様性の保全はそのひとつである。森林の植物群集の構造は、土壌水分・養分や自然撹乱などの影響を通して、地形構造と深い関係にある。そのため、多様性の保全を考慮した施業方法を検討する上で、地形と植物群集構造との関係を把握する必要があると考えられる。そこで、今回は、山地帯落葉広葉樹林において、植物群集の種組成・林分構造・種多様性を地形別に比較することにより、地形と植物群集構造との関係を検討した。方法:調査地は、北上高地の落葉広葉樹林で、標高730m、森林簿によると、林齢は約70年生である。北上川の二次支流である米内川が林班の境界になっており、その境界から斜面上部方向に70×70_m2_の調査区を設けた。調査区を5×5_m2_メッシュに分け、1×1_m2_のサブコドラートを設置した。調査区では、胸高直径5cm以上(上層)の樹木に対し、種名・胸高直径・位置を記録し、サブコドラートでは、ササの高さ、および、高さ2m以下(下層)の維菅束植物に対し、種名・被度を記録した。また、Nagamatu&Miura(1997)に従い、地形を上部斜面域と下部斜面域に区分した。結果と考察:上層群集、下層群集、各々47区画に対し、構成種の相対優占度から郡間距離を求め、郡平均法によりクラスター分析したところ、上層は1ウダイカンバ、2サワグルミ、3トチノキの3タイプに、下層は、4クマイザサ、5チシマザサ、6ウワバミソウ,チシマザサ、7ジュウモンジシダの4タイプに分類された。上層では、上部斜面域のほとんどが1であり、下部斜面域のほとんどが2・3であった。下層では、上部斜面域のほとんどが4であり、下部斜面域の多くが4・6・7で、4は上部・下部ともにも多く認められた。林分構造および多様性のパラメーターを上部斜面域と下部斜面域で比較した結果、個体数密度(上層樹木)・最大ササ高・相対ササ優占率は、上部斜面域で高く、平均胸高直径(上層樹木)は、下部斜面域で高い値を示した。また、上層および下層樹木の種数とH’は、上部斜面域で高く、下層の種数とH’は、下部斜面域で高かった。林分構造および多様性のパラメーター間の相関関係を検討したところ、個体数密度・相対ササ優占率は、上層および下層樹木の種数、H’と正の相関があり、下層植物の種数、H’とは負の相関があった。今回、下部斜面域に比べ上部斜面域の方が、樹木の種多様性が高い結果となり、これは、同じ東北地方のカヌマ沢原生林における報告と逆の結果となった。林分構造の個体数密度・相対ササ優占率は、種多様性と強い関係があったことから、種多様性には、地形間の林分構造の違いが反映されていると考えられる。しかし、2次林では、林分構造の発達段階には、地形との関係だけではなく、過去の人為的撹乱履歴等が関係すると考えられることから、今後、それらについての検討が必要となるだろう。

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© 2004 日本林学会
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